ボクシングの見方② —王道の闘い方とは―

ボクシングの試合は、見方を知るともっとおもしろい!

というわけで、今回は王道の闘い方について解説します。

王道の闘い方とは、選手が多くの試合や経験を重ねていく中で、自然とこの形に近づいていく闘い方のことです。もちろんすべてのボクサーが王道の闘い方をするわけではありませんが、多くの選手がこの「王道」に向かっているように思えます。

では、ボクシングの王道とは、具体的にどんな闘い方をするのでしょうか?解説していきます!

目次

王道の闘い方とは「小⇔中➡大➡KO」という流れで展開していく

王道には流れがあります。その流れを示したのが見出しの「  」の中の図です。と言っても何のことか意味不明だと思いますので、解説していきます。

まず、「小」「中」「大」とはパンチの振りの大きさや強さのことです。例えば小さい(細かい)パンチ、大きい(強い)パンチなどです。つまり「小⇔中➡大➡KO」とは「小さいパンチから中くらい(少し強め)のパンチへ行ったり来たりし、中くらいのパンチがヒットし、ダメージを与えたら大きい(強い)パンチにつなげ、さらにダメージが明確なら連打➡OKにつなげる」ということを表しています。この「中➡大」の部分は言い換えれば「チャンスがあれば攻める!」という勝負の鉄則です。そしてその後はチャンスを展開させてKOにつなげるという流れなので、試合ではとても盛り上がるところです。ある意味「中➡大」という部分は勝負においては自然な流れであり、分かりやすいように思います。

しかし、ちょっとわかりにくいのが、「小⇔中」の部分ではないかと思います。ここは、「小さいパンチをパチパチと当て合い、少し強いパンチを打ってはまた小さいパンチに戻したりを繰り返す」シーンです。試合の序盤や各ラウンドの始まりなどで多く見られますが、試合全体の割合でも、7~8割くらいこういったやり取りが行われています。

見る人によっては退屈に感じてしまうかもしれないこのやり取りは、何の目的があるのでしょうか?

このシーンの意味が分かれば、ボクシング全体の7~8割の部分を飽きることなく、全てをハラハラドキドキ楽しめるわけです!

「小⇔中」では何が行われているのか?

ここで、「小⇔中」の中で行われていることを端的に表したボクシングの格言を引用したいと思います。

それは、「左を制する者は、世界を制する」という言葉です。

この格言の意味が分かると「小⇔中」の中身がよくわかります。

〇「左を制する者は、世界を制する」とは?

まずこの「左」とはジャブというパンチのことを意味しています。「左を制する」を「ジャブを極める」という風に置き換えると、この格言は「ジャブを極めたものは、世界を制する(世界チャンピオンになれる)」という意味になります。ではなぜジャブを極めることが、世界を制することになるのでしょうか?

〇そもそもジャブとは?

ジャブとは、前側にある左の拳を最もスピーディーに真っすぐ打つパンチです。※ボクサーは構える際、(右利きの場合)左側が前に出るように立ちます。パンチの威力を落とし、その分スピードを重視することによって、よけられにくく、またカウンター(迎え撃つパンチ)を狙われにくいパンチです。なのでジャブは他の強いパンチに比べてたくさん打つことができるのです。このジャブをたくさん打つ意味(狙い)は、「相手のリアクションを観る」ことです。自分のジャブに対する相手の反応の仕方(楽によけているのか、ビビっているかなど)を観ることで、相手の対応能力や動揺、ジャブにカウンターを合わせようとした場合は、カウンターの技術やそれを狙っている、といった様々な「相手の情報」を得ることができます。そう、つまりジャブの目的は「さぐる、牽制する」ことにより「相手を知る」ことなのです。

それを先ほどの格言に置き換えると、

「左を制する者は、世界を制する」➡「ジャブを極める者は、世界を制する」➡「相手のことを分かってしまえば、負けないよね」

ということになるのです。

つまり「小⇔中」の中身というのは、「相手のことを一生懸命知ろうとしている」ためのやり取りなのです。

「小⇔中➡大➡KO」の意味

以上のことを、改めて「小⇔中➡大➡KO」に置き換えてみると、

「小さいパンチで牽制しながら相手のことをさぐり、だんだんと分かってきたら徐々に大きなパンチを当てていき、ダメージの蓄積やスタミナの消耗によって明確な弱みを見せたところを一気に攻め込み、KOにつなげる」という風に置き換えられます。

ボクシングの王道は、いわゆる一発狙いや出たとこ勝負ではなく、綿密に積み重ねられたジャブによって強打へとつなぎ、勝利を得られるということなのです。ベテランボクサーほど、失敗や苦労を重ねているもので、それゆえに勝負には臆病であり、慎重であるものです。彼らは決して無謀には闘いません。勝つために全力を注ぎ、その手段として相手を知ろうとするのです。私には、そんな細やかなパンチのやり取りの中から、彼らの努力と苦労を感じる気がします。

さあ、ボクシングの王道の闘い方、お分かりいただけましたでしょうか?

王道が分かると、「王道でないもの」が分かる

王道を知るということは、一定の観る基準を得るということです。王道の見方(普通はこういう風に闘う)という物差しで測ることで、「そうでない闘い方」をする選手に対して「なぜそうするの?」という疑問が浮かんでくるはずです。まだ経験の浅いボクサーであれば、緊張や恐怖によってとても相手をさぐる余裕なんてなく、攻撃一辺倒になってしまうかもしれませんが、トップファイターがもし王道でない闘い方をする場合は、必ず何か狙いがあると思ってください。それを読み解くことができると、その選手の「創意工夫」が見えてきます。そしてその「創意工夫」が分かると、その選手の凄さやより深い感動を味わうことができるのではないかと思います。

「一体何を狙っているのだろう」という目線で観戦することが出来れば、ボクシングに退屈なシーンは一瞬もありません。

テレビやネットなどで私たちの目に届くプロボクシングの試合は、ほとんどが世界タイトルマッチなどの最高峰の試合です。観戦する私たちからすると、成熟された王道のボクシングを観ることが「逆に」当たり前になっているかもしれません。(贅沢なことですが。。。)

しかし、ボクシングに「当たり前」はありません。王道を知った目線で、より深くボクシングを楽しんでいただけたらと思います。

また、具体的な闘い方やテクニックなども解説できたらと思います。

ではまた!

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