ボクシングの見方⑪ —名勝負の探し方―

激しいパンチの応酬、ピンチからの大逆転、何度ダウンしても立ち上がる姿。ボクシングには人の心を震わせるそんなシーンがあり、そんな試合があります。

今回はボクシングの名勝負を見たい方にお勧めの探し方を解説します。

目次

名勝負の要素

名勝負とは、見る者が期待する要素が詰まった試合のことではないでしょうか。数々の試合を見てきた中で、共通する要素を挙げてみます。

1,高度な技術の応酬

攻撃だけではなく、ハイレベルなディフェンスはボクシングの美しさの一つです。おびただしい数の攻撃を鮮やかに躱す姿は見る者を虜にします。また、その動きに秘められた作戦や戦略は試合の面白さをさらに増すことになります。

2,強力なパンチ力と激しい打ち合い

やはりボクシングの見所は激しい打ち合いです。特に強打の持ち主同士の乱打戦を見れば、会場は興奮のるつぼと化すことでしょう。

3,ダウンやピンチからの逆転

最もドラマチックなのが逆転のシーンだと思います。ピンチになった瞬間、襲い掛かってくる相手に立ち向かう姿は見る者に勇気を与えます。

おススメの名勝負の探し方

ボクシングの認定団体や雑誌社が毎年発表する「年間最高試合」

年間最高試合とは、文字通りその年の最も評価された試合です。(海外ではファイト・オブ・ザ・イヤーと言います)激しい打ち合い、ダウンの応酬、まさに死闘とも呼べる試合の数々がその年ごとに乗っています。

リングマガジン ファイト・オブ・ザ・イヤー – Wikipedia

MVP(年間最高選手)を知る

年間最高試合と併せて、MVPを知るのも有効な手段だと思います。MVPを取ったということは当然いい試合をしたわけなので、MVPを取った選手の過去の試合を調べて見るのもおすすめです。

年間表彰選手 (ボクシング) – Wikipedia

名勝負の紹介

ここでは個人的に名勝負だと思った試合をいくつかご紹介します。

ミッキー・ウォード  vs エマニュエル・オーガスタス 

このミッキー・ウォード選手は何とリングマガジンのファイトオブイヤー(年間最高試合)に3年連続で選出されています(2001年~2003年)。エマニュエル・オーガスタス戦(2001.7.13)では好戦的なウォードと技巧派のオーガスタスも対象的なスタイルが激突します。1ラウンドで終わってしまいそうな勢いで猛ラッシュを仕掛けるウォードを神業的なディフェンスとカウンターで応戦するオーガスタス。いつ終わるとも知れぬ打撃の応酬が何と最後の最後まで続きます。この試合は剛と柔の闘い、例えるなら漫画北斗の拳のラオウとトキの闘いの様です。

ミッキー・ウォード VS アルツロ・ガッティ1・3

2002、2003年連続で年間最高試合を受賞したアルツロ。ガッティ戦は実は3戦行われており、すべてが大激戦でした。もしかしたら、2002、2003、2004と年一回ずつ闘っていたら3戦とも受賞したかもしれない内容です。オーガスタス戦が剛と柔の闘いであるなら、ガッティ戦は剛と剛の闘いすなわち、ラオウとケンシロウの闘いに例えられるような壮絶な打ち合いです。両者パンチ力があり手数が多く、打たれ強く、ディデンスが若干甘い(笑)。ですのでバンバン打ち合いバンバン打たれる、見る者を飽きさせない試合です。だからこそ両者の意地とプライドをもろに感じる試合だと思います。

マニー・パッキャオ VS エリック・モラレス(3戦)

この両者も2005年~2006年の間に3戦しており、すべて激戦でした。1戦目(2005.5.19)、野生児のように変幻自在な動きをするパッキャオに対し、端正な顔立ちながら超好戦的なモラレスが1ラウンド目から猛烈な打ち合いを繰り広げました。終盤にはお互い満身創痍の状態でありながら、手は止めず最後まで闘う姿勢に感動しました。お互いハートで打ち合っているといった姿がもろに伝わる試合でした。

この試合で判定勝利したのはモラレスでしたが、2戦目(2006.1.21)では、またも激闘となった後、パッキャオがKO勝利しました。初戦からの逆転劇でとてもドラマチックに感じました。

続いて3戦目(2006.11.18)では、なんとパッキャオがモラレスを圧倒し、3ラウンドでKOしてしまいました。完全決着の瞬間でした。この3戦は3部作のようなストーリ―性を感じました。

名勝負の探し方・まとめ

ボクシングは「筋書きのないドラマ」といわれますが、私の中では「セオリーからドラマに展開する試合」が名勝負ではないかと思っています。なぜかというと、選手は何かしらの作戦を立ててくるものなので、序盤は両者の作戦がぶつかり合います。その作戦が思い通りにいっている状態がセオリー(通り)ですが、セオリー通りのまま試合が決着すると、「上手い」といった感想にはなりますが、どこか「やっぱりね」といった感じにもなります。でもボクシングはセオリー通りにいかないことが多々あって、そこが面白いのです。ここがまさに「ドラマに展開する」という部分です。ドラマとはお互い作戦を出し尽くし、理論武装がはがれ、丸裸になったむき出しの殴り合いの状態です。そこまで行くと、ボクサーの極限の姿、もっと言えば人類の極限の姿が見えてくるように感じます。それを目の当たりにすれば湧き上がってくる興奮を押さえずにはいられません。

序盤の作戦を読み解く面白さと、後半ボクサーのむき出しの姿がどちらも高度な試合こそ「名勝負」と呼ぶにふさわしいのではないかと思います。

でも一番は、皆さんご自身が心の底から感動した試合こそが「名勝負」であることは間違いありません。ぜひたくさんの試合を観戦し、多くの名勝負を見つけていただけたらと思います。

まだまだご紹介したい名勝負はたくさんありますので、また機会がありましたら解説などを入れて書きたいと思います。

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