近年、マスボクシングと言う競技が大会として盛んに行われ、徐々にその競技者も増えつつあるなかで、その競技のあり方について私の思う事を綴りたいと思います。
競技としてのマスボクシングは全ての年齢がターゲットでありながら、一般的に受け入れられるのにはまだ至っていないのが現状です。
それはなぜなのか。迫ってみたいと思います。
マスボクシングとは、ボクシングのトレーニングとして開発された、所謂寸止め(或いは軽く当てる)実戦練習法です。最近では、それが安全なボクシングの練習法として、プロボクサーを目指さない一般の人にも広く行われる様になり、それが競技化されたものが、マスボクシング大会となっています。
競技には厳格なルールが必要です。もちろんマスボクシング大会にはルールがありますが、その中に競技として成立するための重要な部分が欠けていると思うことがあるのです。
その欠けているものとは、「何を競い合うものなのか」と、「勝利した者はどんな栄光を与えられるのか」です。
当てないが故、今打ったパンチが入っているのかいないのかをジャッジが決めてポイントを付け勝敗を決める。そうするとこの競技は、パンチを当てたかに見せる上手さを競い合っているという風にとらえられるのですが、果たして選手はそこを目指して日夜練習に励んでいるのでしょうか。また、観戦者もそこを見て選手を応援するのでしょうか。
そうでなければ、この競技はなにを競い合っているのでしょうか。
そう言った競技たらしめられるものが曖昧で、(一般の人が見ると)わかりにくい謎の競技になってしまっているのがマスボクシング大会の現状では無いかと私は感じてしまうのです。
私としては、マスボクシングの楽しさや魅力を充分理解しているので、万人に受け入れられるポテンシャルを持っていながら、目指すところが曖昧が故にイマイチ見る者がどう捉えていいのかわかりにくいこの競技を歯痒く思います。
現在行われているマスボクシング大会は、ジャッジをする審判はベテランの元プロやアマボクサーの場合が多いと思いますが、「リアルボクサー※」がリアルで無いマスボクシングの本当の素晴らしさをどこまで理解出来るのか、甚だ疑問です。
※ここではプロ・アマ問わず実際にパンチを当て合う試合やそれに出ている選手を、当てないマスボクシングと対比して「リアルボクシング・リアルボクサー」と呼ぶことにします。
そういったジャッジが付ける評価はあくまで「リアルボクシング」の目線なので、今のマスボクシング大会は、「リアルボクシングの廉価版」という評価になってしまうのではないかと思います。そうなると、全てのボクシングファンという巨大なターゲットのモチベーションを下げてしてしまっている要因になってしまうのではないかとも思うのです。
リアルボクシングの試合にマスボクシングの試合は勝てない、ならばマスボクシングの選手はリアルボクシングの選手の廉価版でしか無いと。
当然リアルボクサーがマスボクシングの競技者に何ら刺激を与えられる事は無く、またマスボクシングの競技者はリアルボクシングが出来ないというレッテルが貼られる、お互いに負の関係になってしまうのではないでしょうか。
しかしながら、スポーツの世界においては、同じカテゴリに居ながら全く別の立場で、両者のリスペクトが成り立つと言う事があります。
例えば、スケートと言うカテゴリにおいて、スピードを競い合うスピードスケートと、スケートを滑る美しさを競い合うフィギュアスケートがあり、そのどちらもが一般社会において同等の賞賛を得られる競技になっています。
或いは競泳とアーティスティックスイミングも同じです。
ならば、ボクシングでもそれが可能では無いでしょうか。
ボクシングにもリアルな力強さと、アーティスティックな美しさの両方を兼ね備えていると私は確信しています。ならば、マスボクシングは、スケートで言うフィギュアスケート、水泳で言うアーティスティックスイミングの様な立ち位置の競技として成り立つのでは無いかと思うのです。
だからこそこの競技は、スピードスケートの選手がフィギュアスケートの評価をするようなことではなく、ボクシングに於いても独自の競技者が正当に評価する必要があると思います。そうなって初めてこの競技がごく限られた界隈の身内事から、広く一般に認められる競技、スポーツになるのでは無いかと私は期待を込めています。
マスボクシングが誰でも分かりやすい競技になるため、
「何を競うのか」という事と、「それをどうルール化するか」についてこんな風になればいいなと思います。
〇競技マスボクシングは何を競い合うのか
競技マスボクシングは、ボクシングに内在する美しさを競い合うものである
〇ルールについて
ルール1 ボクシングにおいて、美しいフォームや難易度の高いテクニカルな技をポイントとして重視し、ポイントの差で勝敗をつける
ルール2 そのテクニックは、相手に呼応したものであって選手個人が自由奔放に繰り広げられる動きでは無い
ルール3 その技や難易度、評価を決めるのはマスボクシングを熟知した人物であること
こうすることによって、競技マスボクシングの勝者は相手よりも「美しボクシングができる」という栄誉が得られます。世界チャンピオンはそこに「世界一」が付くのです。
そして、美しく高度な技術を披露できるマスボクシングの試合は、当然リアルボクサーが学べる機会にもなり、お互い上下関係は無くなります。双方がリスペクト出来る関係にもなるのはずです。
皆さんは「世界一美しいボクシング」が出来るようになりたいと思いませんか?