ボクシングの見方③ —「強さ」と「上手さ」の違いって何?—

ボクシングのリングで2人の男性

ボクシングは、見方を知るともっとおもしろい!です。

今回はボクシングにおける「強さ」と「上手さ」について解説します。

このテーマはちょっとが長くなりそうなので、2回に分けて投稿したいと思います。

目次

ボクシングを「強さ」と「上手さ」で表す

プロボクシングの試合では、明らかにテクニックが勝っているにも関わらず試合では負けてしまうケースや、逆に明らかにパンチ力が勝っていても相手のテクニックに翻弄されて敗れてしまうというケースも見られます。

ボクシングにおいて、強さと上手さは勝利にとても重要な要素であるにもかかわらず、どう違うのかを説明するのは意外と難しいと思います。

でも、「強さ」と「上手さ」、2つの要素を明確にすれば、よりボクシングの見方も明確になるのではと思います。

そこでまず「ボクシング」を要素に分解すると、「殴る」に「強さと上手さ」が加わったものということができるので、

「ボクシング=殴る×強さ×上手さ」

と表すことができると思います。この式は後で出てきますので、ちょっと頭の片隅に置いておいてください。

ボクシングの原点

ではここで、強さと上手さを理解するために、ボクシングの原点に遡って考えてみます

ボクシングは大枠では「競技」でになります。「競技」をもっと遡ると「競い合い」になります。この競い合いこそが全ての「競技=スポーツ」の原点になります。

では、ひとは何を競い合っているのでしょうか?

小さいころ友達と駆けっこやボール投げなどをして競ったことはあると思います。例えば駆けっこであれば、「足の速さ」、物を投げるのであれば「物を速く投げる能力または、遠くへ投げる能力」を競い合っています。「足の速さ」や「物を遠くに投げること」に共通するものは「肉体」です。方や、現在では囲碁、将棋、チェスなども「マインドスポーツ」として競技に位置づけられています。これらはほとんど肉体は使いませんが、「頭脳」を使うところが共通します。また、肉体を競う合うとしてもトレーニングの仕方や、チームプレー、戦法・戦術においては大変頭脳を使います。つまり競い合いとは、『「肉体×頭脳」を相手と比べあって優劣をつけること』といえることができると思います。

これを式に表すと 

「競い合い=(あらゆる動き)×肉体×頭脳」

と表せると思います。

そして競い合いの「あらゆる動き」の中で、ある特定の動き(走る・泳ぐ・物を投げる・跳ぶなど)を取り出したものが「競技」になるわけです。

これを上の式に加えると、 

「競技=ある特定の動き×肉体×頭脳」

となります。そしてこのある特定の動きを鍛錬することによって、肉体と頭脳は「その動きに特化した肉体」と「その動きに特化した頭脳」にバージョンアップされていきます。それが競技者(アスリート)です。

つまり、

「競技者=ある特定の動き×その競技に特化した肉体×その競技に特化した頭脳」

となります。

ボクシングを当てはめると

では、「ボクシング」を上の式に当てはめてみると、ボクシングにおける「ある特定の動き」というのは「殴る」ということになるので、

「ボクシング=殴る×ボクシングに特化した肉体×ボクシングに特化した頭脳」

となります。

そこで、最初の式である「ボクシング=殴る×強さ×上手さ」に上記の式を当てはめると

強さ=ボクシングに特化した肉体

上手さ=ボクシングに特化した頭脳

となるわけです。つまり、強さとは肉体であり、上手さとは頭脳であると言えることができると思います。

ボクシングに特化した肉体とは

では、より具体的に「ボクシングが強い=ボクシングに特化した肉体が優れている」とはどういうことか考えてみます。

「ボクシングに特化した肉体」というのは「ボクシングに特化した動き」をするのに優れた肉体のことです。では「ボクシングに特化した動き」というのは何かというと

・攻撃(ストレート、フック、アッパー、ボディブローなど)

・防御(ブロッキング、ヘッドスリップ(躱す動き)、パリング(パンチを叩き落とす)など)

・牽制(フェイント、フットワーク、プレッシャーなど)

などがあります。このひとつ一つの動きのことを「技」と呼びます。この技が「より力強く、速く、たくさん」出せることが「ボクシングに特化した肉体」が優れていることになります。

ボクシングに特化した動きを見るポイント

 ボクシングに特化した動きを、実際の試合の中で見るポイントをご解説します。

攻撃:打撃を当てた時、相手ののけぞり方の大きさ、後ろへ吹っ飛ぶように下がる様、当たった時の炸裂音、パンチのスピード、連打のスピードなど

防御:相手のパンチをブロックをしたときのぐらつき方(あまりぐらつかないと体幹が強いと言える)、反応の俊敏さ(勘の良さ)、空振りをした時の立て直しの速さ、パンチを食らってもすぐに打ち返す様など

その他のポイント:構えや風格が堂々としているか、表情から焦りや臆病な様子はないか、試合の後半でもスタミナは維持できているか(疲れた様子はないか)

など、観るポイントの例を挙げましたが、どうぞ独自の観るポイントも探してみてください

ケンカやただの殴り合いと、ボクシングの違い

余談ですが、「ボクシングはケンカやただの殴り合いじゃない」とボクシング経験者がよく言うのはなぜかというと、ボクシングには『「ボクシングに特化した肉体×ボクシングに特化した頭脳」が鍛錬によって備わっているから』と説明することができるからです。体の大きな人や、他のスポーツで肉体を鍛錬したアスリートは、もしかしたら軽量級のボクサーよりパンチ力が強い人もいるかもしれません。でもそのパンチは「ボクシングに特化したパンチ」ではないし、ましてボクシングに特化した頭脳は持ち合わせていないはずです。そういった肉体や頭脳は、厳しいボクシングの鍛錬の中からでしか得られないのです。

まとめ

いかがでしたせしょうか?ちょっと小難しい話になってしまったかもしれませんが、要するにボクシングにおける「強さ」とは、「ボクシングに特化した肉体である」というお話でした。

では「上手さ」はというと「ボクシングに特化した頭脳である」と言いましたが、これだけでは少し分かりにくいと思いますので、次回「ボクシングの上手さ」について解説したいと思います。

ではまた!

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